2007年07月26日

7月23日(月) 羊屋×橋口クラス レポート

「行動原理が剥き出しになる瞬間」

文・脇野定則(ボランティアスタッフ)

7月23日月曜日13時パトスにて、羊屋ゼミ橋口クラスが始まった。
ゆっくりとしたリズムのストレッチが十分に行われていたかと思うと、すうっ、と自然な感じで「ビューポイント」と呼ばれるワークショップが始まった。
まず、4足で歩き始める。掌、足裏の4箇所に均等な力を与えながら、自由気ままに前後左右に歩くように支持される。視線は床を向くけれど、視点を広く取り、気配を探る努力をすれば、容易に誰ともぶつからずに歩き回れるという事実を体験していく。
やがて、立ち上がりたくなったら、2足方向になり、自由に徘徊するように促され、ひとり、またひとりと歩行を始める。
気ままに歩いている。・・・多分、参加者は歩いていると思っているのだろうが、外から見ているとそうではないことが一目瞭然。まだまだ、遠慮があり、何をして良いかが分かりかねていて、羊屋氏の歩いた軌跡を、仕草をなぞっているに過ぎない。
そんな中、一人違ったのが、橋口氏。早くも「まっすぐ行って壁にぶつかり、一瞬止まって、方向転換」という行動をはじめる。しかも、鋭角的、直線的、大回りという軌跡を描く。羊屋氏との接点の多少、クラスで与えられたポジション、その辺りが影響しているのかもしれない。それとも、性格が表に出始めたのか。そんな考えが浮かんだ。
羊屋氏から次の指示が飛ぶ。「部屋の真ん中を通るように歩いて」「(奥の左右の角にある)スピーカーの近くを通過して歩いて」「左回りなので、皆右回りになって」
徐々に参加者が歩くことに馴染んでくる。各自、歩くことのへの自由度の幅か広がり始まる。
見ていて面白い。これは、ひとつの舞台としても良いのではないかと思い始める。ただし、それは、演じる側にはちょっとしたリスクが生じることが、すぐにわかるのだが。
羊屋氏の指示は続く。「極端にやった方が差がわかるから(速度や仕草の変化は大きく示して)」「真っ直ぐに歩いて、曲がる時には直角に歩くようにして」
そして、舞台の正面が決められて、歩くスペースが部屋の半分に制限される(擬似の観客席が設けられ、参加者は知らぬうちに舞台に上げられる)。
さて、ここからが、参加者たちにちょっとしたリスクが生じてくる。各人の性格や行動原理がむき出しになっていく。これを舞台にするのは、ちょっと残酷かなと思うくらいにまで、表面に出てくるのである。
羊屋氏「一番近い壁に寄って止まってください」と指示を出す。「空間に入りたくなったら、入りたいテンポで、真っ直ぐに直角で入ってください」と指示が続く。
少しばかりの無動作の後に、一人目が空間に足を入れる。触発されて、一人また一人と空間に入っていく。流されるように入るものもいれば、タイミングを見て入っていくものもいる。
すでに性格が出始めている。
「歩いている時には、ソフトフォーカスで(視点を集中させないで、視野を大きく広げて、良い意味で漠然とした感じで物を捕らえる)」「出会った時、分かれる時が難しい。90度を守って、清清しく分れる」との指示が出る。
しかし、参加者は逆に考えて歩かざるを得ない状況に追い詰められる。歩き方のストックが尽きてきたのもその理由のひとつだが、他の者との差別化をはからなければという無意識の意識がどこかにあることも見て取れる。
「誰かの仕草の真似をしてみよう。向かい合った相手の何かを真似しても良いし。遠くの人の真似をしても良い」そう言われて、参加者の中に新しい動きが出始める。時間差、誘い、リフレイン、変換、真似の連動、連作など。きっかけを与えられて、生き生きと、次々と新しい動きを取り込みだす。でも、個人差はますます大きく出始める。
「丁寧に伝染が起こっている(もっと緩やかな形も取り入れて)」「もっともっと近付いて、向かい合って、同じタイミングで、分れてみて。集中するとわからなくなるから、ソフトフォーカスを使って」と羊屋氏。
従う参加者たち、更にしばらくして、羊屋氏が指示を出す。「外側から見てみる必要もあるから、自由に抜けたり、入ったりしてみて」
参加者たち、抜けたり、入ってみたりを繰り返しながら、歩き、出会い、分れ、いろいろな真似をする。
動きにルール(傾向)が出来始めたかなと思っていたところ、羊屋氏も「偶然にも2つのパターンが繰り返されることになった。この先は、アクションを増やす必要ない。(今までの動きを振り返って)自分の中に深く落ちた動きをフィードバックさせてみよう」と口にする。
参加者たち、思い思いにフィードバックを始めるが、それはそれで別の新しい動きへと発展していく。個別で発展させるのではなくて、相互に影響しあいながら発展していく。
見ていて面白い。
足を踏み鳴らし、手を打ち、服を叩いて、ゆっくり、あるいは速く歩いて、そして立ち止まる。それらの動きは個々の部分が希薄になり、相互に呼応する。無意識のうちに各々の役回りの確定ができつつある。そんな感じがする。・・・ただ、各自、自分のエリア(縄張り)の確立も始めている。絶妙のバランス。
やがて、皆が立ち止まり、体を揺らす。ひとりの始めた休眠期がスムーズに伝染していく様が良い。個人同士が融和しているのがわかる。
しばらくして、参加者は、また一人一人と動き出す。
ここで、羊屋氏の声がかかる。「はじめと一緒で、自分で終わり方も考えてください」
途端に、また個が出始めた。自分のタイミングを探して、一人一人と壁際へ去っていく。
ここまで、約1時間半。
参加者にも私にも、もっともっと短い時間に感じられたが、ちゃんと1時間半たっていた。

続いて、車座になり、ビューポイントについての感想や意見を言い合う。
「戦略を立てて動いていたの?」「何かに似ていると思った瞬間はない?」「頭では何を考えて動いていたの?」などと、橋口氏が会話のきっかけをふっていく。
参加者は、思い思いに言葉を口にして、ワークショップでの自分や全体像を追認していく。話すものだけでなく、聞いているものも頷いたりして追認していく。
ただ、やはり、発せられる言葉に違和感を感じる部分もいくつか出てくる。見ていて感じた部分と、追認していく言葉の部分に乖離が生じたときだ。
人とはそんなものだ、そう思いながら納得する。
各々が何を話したかは、ここでは語らない。この情報が本当に必要なのは参加者たちだけだからである。

休憩と自己紹介を経て、後半に入る。

後半は、橋口氏主導のワークショップ。ホールを札幌市に見立てて、参加者がその上で日常での移動を繰り広げれる。札幌市から出るときの方向をへ歩かされる。
大きく動くもの、ほとんど動かないもの。しかし、単調で、なにか面白くない。
それに対して、眺めていた橋口氏が「コミュニケーションが生まれないから、つまらないのか」と一言。・・・思惑と違ったらしい。
なるほど、この動きでは、すれ違いはあっても、接触がない。当然と言えば当然であるが、そんなものはやってみなければ分からないのが常で、だから実験は楽しいのである。
参加者とのディスカッションが始まる。
「一人でなぞるだけだと、単調になって、つまらない」「もっと、皆が集まるような空間で、室内とか」といった意見が出くる。
橋口氏、修正を加える。「では、室内での動きを再現してみよう。ただし、同じ部屋にいるのではなくて、各々が自分の住んでいる部屋の間取りを浮かべて、その中での行動を再現しよう」「誰かが、自分の場所に入ってきたら、共有して、動作も協力しあおう」
部屋の中心だけを規定して、それ以外の方向や広さなどは各人が判断にゆだねる形で始まる。
まずは、朝からである。各人が、色々な方向、色々な格好で寝ている。すぐに起床するものが現れる。寝続けるものもいる。朝の支度の最中に、何人かがすれ違うが、まだ邂逅までには至らない。
だが、間もなく、接触が起こる。入浴が重なり体を洗いあう者、トイレが重なり尻を拭き合う者、食事を一緒に摂ることになる者などなど、個々のレベルでの接触である。
それだけで、物語性が出てきて、面白さは格段にあがる。
1日目が過ぎて、2日目に入る。
「自分で自由に間取りを変えてもよい」との条件が出さる。それで、やっと、昼食時に一同が会することができた。
間取りを変えられること、一同が会することによって、コミュニケーションの態度が変化し始める。たまたま会ったから時間を共有するという態度から、自分から積極的にコミュニケーションをとろうとする態度への変更である。
ここでワークショップが終わり、ディスカッションが始まる。
前半でのワークショップと異なり、参加者だけでなく、橋口氏も壁にぶつかって惑っている。
「抽象的(な動き)ではなくて、具体的なものなので、言葉が使いたくなる」「自分の感じている時間が、(他の者たちの時間と)合わなくて、それを調整する前に終わってしまった」「食べ物の中身について、お互いに誤解が生じていた」などが示された。
一段落した後に、橋口氏が「空間の最小単位を再現して、そこから世界を広げていきたい」と、未屋氏が「お互いの関係性を作り上げられたら、言葉は減らせる」「1人1人の動き、ルート作りを他の人が外から見ることができれば、どこで邂逅すれば良いかわかってくるはず」と述べる。
翌日は、3人単位でのワークショップを試みようとなる。

最後にテキストの配布となる。
アフリカのボロロ族の民話である。これを(白黒、カラー、部分、拡大)コピーしたり、誤解、歪曲させながら、今につながる話を作り上げて、ショーウィングに持っていきたいと参加者に告げて終了となった。


posted by sapporo at 12:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 2007年/羊屋ゼミ・レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。